8018 裏切り者

云年後マフィア。死ネタ?



 この世界のものは何もかも神様が作ったもので神様の一存で全てが動いてるんだって、イタリア人の同僚からそういう話を聞いたときは訳が分かんなかったけど、これから起こる出来事も神様の一存ってやつで成り立ってるんだったらやっぱりオレには神様ってものが分かんねえしこの先も一生理解できねえんだろうなと思う。
 ヒバリはオレに銃口を突きつけられているいまこの瞬間にもやっぱりその後頭部は丸くて艶やかで、そこからのぞくうなじはまるで陶器のように白いのに、その皮膚の下には真っ赤な血が通っていて心地よい体温を持っていることをオレは知っている。シーツで隠れた背中も、腕も、脚も、うつ伏せになった胸板も、へそも、その先も、ヒバリは何もかもが美しい。神様はヒバリをこんなにきれいなカタチに作っておいて、才知も気品も人よりずっとたくさん与えて寵愛しているように見せて、どうしてそれをオレなんかに壊させるんだろう。しかもこんな取るに足りない拳銃で、背後から、脳天を貫くようなやりかたで。
 起きがけのベッドの上なんてのもこいつにとっては酷な墓場だ。ヒバリはきっと戦場で死にたかったろうに、他人の血を全身に浴びて、戦って闘って、人間も大地も大空も、この世界の何もかもを咬み殺して、有り余る力のすべてを枯渇するまで出しきって、そうして眠るように息絶えたかったろうに、恋人を自称するひとつ年下の莫迦な男と身体を這わせたベッドで、その莫迦な男から暗殺というカタチですべてを奪われるなんて。
 あんたがボンゴレを裏切ったとかはオレにはどうでもよくて、きっと神様にとってもどうでもいいことのはずで、だってたとえあんたのせいでボンゴレが崩壊して、世界の市場と治安が乱れたとしても、あんたの美しい秩序はそんなものをずっと超越したものに違いなくて、あんたさえいればこの世界はずっと美しいままなんだから。けど、どうしてもそれを許せない人間がこの世界にはたくさんいて、そのひとりがオレの一番の友人で、オレが一番に従わなきゃいけねえ男で、オレの知ってる中で一番正しい精神を持った人間で、そいつがあんたを殺せって言ったんだ。
 きっとオレには人情を盾にしてそれを断ることも許されたんだろうけど、オレが逃げたところで誰かがあんたを殺しに来ることは違いないんだ。しかもそいつはオレより正義に忠実で、あんたの存在を消すことがこの世のためだと信じて疑わないままあんたの息の根を止めようとする。それならオレが引き受けたほうがいい。あんたの存在が、我欲や詭計という分子も含めたあんたのすべてがこの世界には必要不可分なのに、人間はあんたを排除することが正しいと盲信してるし神様もそれを黙認してる、そんなおかしな事象に疑問を持っているのはきっとオレだけなんだから。だから、オレ自身の手であんたの愛しい脳天を貫くほうがずっと、ずっとましなんだ。

 走馬灯のように駆けめぐった弁明を呑みこんで、オレは引き金に指をかけた。
「ごめんな、ヒバリ」
 この間、1秒。それだけあれば身を翻して俺のみぞおちを蹴り上げられただろうに、ヒバリは身じろぎ一つしない。
 ああ、ヒバリ。あんたは、神様ってやつとグルなのか。あんたはあんたの意志でオレに殺されようとしているのか。そんなに美しい姿かたちをして、そんなに美しい毒を持っているのに、オレにそれを殺めさせて、オレたちの世界からあんたを剥奪しようとしているのか。世界に悲劇をもたらせるのが、あんたにとっての秩序なのか。
 愛しいつむじは何も答えない。
 そっか、それなら。
「オレは操り人形だから」
 あんたの美しい秩序の。
 かくあらせたまえ。デタラメな祝詞を胸に、オレは引き金を引いた。



(了)

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山ヒバイニシエーション論(山本武のイニシエーション その3)

 前回からだいぶ期間が空いてしまいましたが、山本武のイニシエーション考察について補足し、一旦完結させたいと思います。
 追記よりどうぞ。

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山ヒバイニシエーション論(山本武のイニシエーション その2)

 山本のイニシエーションの続きです。
 イニシエーション理論の法則に則らなかったアルコバレーノについても。
 追記よりどうぞ。

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8018 喪服

云年後マフィア。


 スーツを新調した。
 店員にはあのシルエットがいいこの色が似合うと姦しく口出しされたが、美的センスのない保守的なオレはやはりいつもの黒スーツを買うことにした。
 ユニフォームが野球ウェアから黒スーツになって早4年。
 初めはスーツに着られている感が否めなかったが、4年も同じ格好をしていればさすがに板につくもので、店員の褒め言葉もお世辞には聞こえなかった。

 下ろしたてのスーツでアジトに行くと、ヒバリに出逢った。
 ヒバリは談話室のソファに腰をかけて何か読み物をしていたが、オレに気がつくと、靴の先から頭の天辺へと視線を這わせ、ふうんと呟いた。
 そういえば初めて黒スーツに袖を通した日、ヒバリから面と向かって「似合ってないよ」と言われたっけ。
「オレのスーツ姿もさすがにサマになってきただろ?」
 そんなオレの戯言を鼻で笑いながら、ヒバリは手元の本に視線を落とした。
「きみが着てたら喪服にしか見えない」
 喪服か。まあ、間違ってはないかもな。
 オレはこの4年間でいろいろなものを葬ってきた。
 野球を葬り、故郷を葬り、そして多くの人の命をも。その間に親父も死んだ。
 これからもきっと、多くのものを葬るだろう。
 自分の大切なもののために、他の誰かにとって大切なものを葬っていくのだ。この喪服を着て。
 ヒバリの隣に腰を落とすと、彼はページをめくる手を止め、ネクタイを引っぱった。
「せめてこれは外してなよ」
 学生時代はあんなにネクタイをしろとうるさかったヒバリが、ネクタイを取れだなんて。
 そんなことを言われる日が来るとは思わなかった。
 ヒバリの締めている黒ネクタイは、彼の喉元できれいな逆三角形を呈している。
 あんたが着てるのも喪服なのかと訊くと、喪服を着た人間にはとてもできないような顔をして、彼はさあねと笑った。
 きれいだった。



(きみに喪服は似合わない。)

山ヒバイニシエーション論(山本武のイニシエーション その1)

 今回から、イニシエーション理論を山本武に当てはめて考えていきます。
 追記からどうぞ。

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